絵、音楽

安堂隆=山田尚子説の裏付けにアップデートが

今年の頭くらいだったように思う。かぐや様2期OP演出の正体は山田尚子だとする言説が、まことしやかに囁かれ始めた。

正直これまで全くピンと来てなかったのだが、昨日アニメ界に訪れたアップデートで見方が180度変わった。安堂隆=山田尚子説を裏付けるには十分すぎるくらいに。なので、論考とかでは全然ないが備忘録的に記す。

 

 

2021/10/9 午前0時に『ヴィジュアルプリズン』というアニメの第1話が放映された。Elements Garden上松範康A-1 Picturesが共同で手掛ける音楽系のアニメらしい。放送前のチェックだと阿佐ヶ谷は最近随分女性向けに寄ってるなーくらいの印象に留まっていたが、これのOP演出を安堂隆が手掛けた。

もっとも、それだけで、かぐや様2期OPと同じような感じだったらさしたる話題にはなっていなかったかも知れないが今回はどうにも作画/演出オタクたちの様子がおかしい。かくして俺の耳にも届くこととなり、実際にOP映像を見て衝撃を受けた。

 

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このカット、見れば見るほどに山田尚子でしかない。

レイアウトも色も撮影も・・・京アニ時代に手掛けた演出で特に印象が近いのは『けいおん!』EDや『中二病でも恋がしたい!』EDなど。心なしかこの若干の釣り目具合は堀口絵さえ彷彿とさせる(『たまこまーけっと』のもち蔵や『CLANNAD』の堀口作監回の朋也に顕著で、堀口の描く男性キャラクターは目尻が吊り上がりがち)。

京アニ時代のように隅から隅まで山田尚子色という訳にはいかないらしかったが、これを含む動きの少ない数カットは正しく山田尚子演出というほか無い。もともと大きな動きよりは画面全体の色味や小さな仕草に特徴が出る(『氷菓』#9 古丘廃村殺人事件 奉太郎が口を手で覆うところとか、#14 ワイルド・ファイア えるが低い位置で両手を振るところとか)ので阿佐ヶ谷の粗さには多少目を瞑るのが妥当な落としどころかも知れない。

 

かぐや様2期の話にも繋げたい。A-1のプロデューサーがこんなツイートをしていた。

"アニソン界の大型新人"鈴木雅之というのは最早定番中の定番となったお馴染みのギャグ。しかし「安堂さんはアニメ界の超大型新人です!!」を同じギャグの構造に落とし込もうとすると"安堂隆は実写映像界では既に超大物である"ということになるためちょっと変だが、ツイッターのノリをいちいち理詰めで追究しても仕方がない。普通に捉えれば"既によく知られた超有名演出家だけど変名でやっていただいてます"という意味だ。

するとまあ、実際のところそれなりに候補は限られてくる。A-1ってその辺厳しいイメージは全然ないんだけど最近でも『ダーリン・イン・ザ・フランキス』ED1の演出を手掛けた田邉理科の正体は鶴巻和哉でしたみたいな例はあって、要は鶴巻くらいのビッグネームで鶴巻くらい所属(この場合カラー)の拘束が激しい作家だと変名を用いる必要があるのかも知れない。

 

ここで改めてかぐや様2期OPを見る・・・が、やっぱり全然山田尚子感はしない。『けいおん!!』ED1との類似点を指摘している人が数人いるけどそんなに珍しい演出ではないと思うので、「山田尚子演出らしい」→「確かにこのみんなで並んで左に歩いてるとこ似てる」は成立しても逆はどう考えても無理。

しかし今思えば、この"どう考えても無理"感こそが決定的な証拠だったのかも知れない。過去の事象に対する見方が冗談抜きで180度変わってる。

本記事の冒頭で述べた通り、今年の頭くらいから作画を語るスレでなんかやたらと「かぐや様2期OP演出パピコだぞ!!」的なコピペが貼られだした記憶がある(若手の作画語れない老人しかいなくなったので2年くらい前からスレ自体あまり頻繁には見なくなったけど)。その度に作スレ民は一蹴していて、俺も「ねーだろ」と思っていた。要するに"安堂隆=山田尚子だと知っている業界人がひっそりウワサを撒き始めた"くらいしか考え得る線が無かったのだ、もとより。まあここで気付いてたとて結局ヴィジュアルプリズンOPが無きゃどうにもならなかっただろうけど。

 

 

個人的に山田尚子にはまた青春コメディを作ってほしいので、そういう企画が持ち上がったとして流れでA-1阿佐ヶ谷かCloverWorksが元請やってくれたらかなり嬉しい。SARUでそういうアニメは無理だろうし、SARUの経営方針は、率直に言うと凄く嫌なので。湯浅ファンだから尚更。

でも平家物語良いよ。わざわざFOD登録して毎週追ってる。凄く良い。

京アニで作品作る一番のメリットって 内製指向→密なコミュニケーション→セクションを越えた信頼関係 だと思うんだけど、京アニを離れても以前から信頼関係を築いてきた吉田玲子と牛尾憲輔の存在があるのは本当に大きい。びわと重盛のキャラクターも立っていて、悠木碧櫻井孝宏が本当に上手い。

そして、松尾祐輔のように随分前に京アニで仕事してた人と、秋竹斉一のように最近まで京アニで仕事してた人と、ちなのように山田尚子に強い憧れを持つ若手が山田尚子のもとで一緒にアニメを作っている。これは本当にすごいことだよ。本当にすごい。何かを創り続けていればこんな奇跡も起こるのかも知れないね。

 

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3話(演出ちな、作監今岡律之ほか)のこれでもかというくらいの今岡律之ハンド。

奇跡だろこんなの。LOVE............................................