絵、音楽

モッシュレースとキルミーMAD

さくらみこ x 兎田ぺこら『モッシュレース』のMVが流石に間違いなく2023ベスト確定......言ってもこのノリはネタでやってる側面も強いのだけれど、流石にこれに関してはなんならここ数年見たMVの中でダントツ一番なので...........要領を得ない散文でも感想を記録しておく ホロライブありがとう、DECO*27ありがとう、全ての音MAD文化にありがとう、全てのYTPMV文化にありがとう、そして『Please kill my love』にありがとう 極論それが全てです

 

モ の色々①|odayaka|pixivFANBOX

モ - 藻塩

SUNNY CAR WASH - キルミー (Official Music Video) - YouTube

 

「おだやかが監督やったんだ」がファーストインプレッション。去年11月に監督宝井・キャラデおだやかでバンドリの派生企画のMVをやってて、まあそれが結構好きだったのもあって、割と普通に似た映像を期待した。座組も似たようなもんだろうと思っていたので。

【MV】影色舞 / MyGO!!!!!【オリジナル楽曲】 - YouTube

ただし↑のMVはおだやかの絵が出過ぎてる。俺はこかむもの絵がめちゃめちゃ好きで、そのフォロワーであるおだやかの絵も好きなので楽しめたけど、正直なところブシロードのオタクにこれがちゃんと刺さってるのかは今でも分からない。

 

そんな感じで見始めた。開始10秒で絵柄が2回変わった。これもしかしたら異常な作品かも知れない

はまち絵(推測)がぐりぐり動く。

 

と思ったら静止画になって左右反転を繰り返し始める。マジか。ナユタン星人の表現じゃん。

 

・・・・・・はぁ!?

大量のループ素材、絵柄の不統一性、文脈の無さ。こんなの音MADじゃん。YTPMVじゃん。マジで?え、マジで??

 

 

うわーマジだ。マジでこれでいっちゃうんだこのMV。

いや、だって、監督・おだやかのブログにも書いてありますが、(少なくともメジャーシーンで)音MAD/YTPMVの手法でMVを作りきっちゃうなんて前例がないんですよ。「インターネットの手法で作り切る」という意味では『日本橋高架下R計画』(2012)がTumblrの発想で完全な解を示してしまっていて、その後同じ発想で作られた『ワールド・コーリング』は案外普通のMVの域を出なかった。さらにその後別の発想でインターネットの手法を試すMVとなるとついぞ現れなかった。はずだった

しかもこれさあ、この感じはさあ、『キルミニッツ』じゃん。『Please kill my love』じゃん。やっぱり創作系音MADとエンタメの合流地点ってキルミーベイベーなんだなあと。

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『Please kill my love』は......今は名義を変えてイラストレーターとして活躍しているなで肩本人が動画を消してしまったので無断転載を参照されたい。もともとグレーな文化だし。まあ俺はもちろんとっくの昔にローカル保存してあるが.................

 

 

サビは商業アニメーター(左が富岡海任、右は宝井(推測))による動きの大きい作画でしっかりと画面を締めるのもすごく良い。これは本作の音MAD部分の最大の立役者と言える聖なるバリア -ミラーフォース-の表現が強く影響してると思う。

インドア系ならマキシマイザー - ニコニコ動画

聖バリの代表作である『インドア系ならマキシマイザー』は渡辺明夫デザイン(推測)の謎アニメ(『パチスロ1000ちゃん』)が『インドア系ならトラックメイカー』と『マーシャル・マキシマイザー』のいずれの文脈も無視して主張しているからひとつの動画としてすごくすわりがいい。

 

ドロップの表現も良い。これは音MAD直系ではないがその亜流であるころんばおよびそのフォロワー(「界隈曲」という呼称を使うのは簡単だが使いたくない!)の影響を感じる。

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そしてまるで定番のフォーマットがあったかのように音MAD/YTPMV文化を参照しながら恐ろしいクオリティと面白さでこのMVはぐいぐい進行していくのだが、監督のおだやか自身が編集を担当した間奏パートで奇跡が起きる。

ここは明らかにR.M.による名作キルミーMAD『キルミー』を参照しており、奥のレイヤーで中心~右に並ぶ7つのハニカム内のイラストをカヅホが担当した。こんなことある???????

キルミー - ニコニコ動画

今回ばかりは流石に言っていいんじゃないですかね、あの合言葉を、「実質キルミー2期」を...............................

 

そして極め付けに、「これが音MAD/YTPMV文化だ!!!!!!!!」と言わんばかりに静止画の兎田ぺこらが回転しながらぶっ飛んでいく。この思い切りの良さと胆力ははっきり言ってめちゃめちゃやばい。日本橋高架下R計画』で打ち止めだったはずのインターネット的MV表現が10年以上経った今ではあるけど確実に、確実に前進した感覚があって、逆光表現のエモさも相まって思わず泣きました。

こういう全編に渡るカオスさが兎田ぺこら/さくらみこの配信スタイルと非常に相性が良いのは言うまでもなく。全ての要素がかっちり親和した最高のMV。。。

 

この方向性に再現性があるかと言うと、そうじゃないかも知れない。おだやかやこかむものブログを読めば分かるように、短期間の異常な熱量で達成されたという側面は絶対ある。TVアニメで言うと『ローリング☆ガールズ』とか、そういう作品って絶対にある。だけど『モッシュレース』によってアニメMV表現は確実に前進したし、そのルーツにキルミーMADがあるという事実がただただ感慨深い。

そんな感じ!