絵、音楽

0314日記 運河探訪など

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卒業証明書を発行するために、運河くんだりまで赴いた。

 

1号館の自動発行機から「べーっ」と出力されたそれには、学長の氏名が記載され、仰々しいハンコが捺されていた。尤も、印刷物に過ぎないので、「捺す」という表現は、こう、スピリチュアルな側面から捉えると不適切かも知れない。まあ何千何万と発行される書類にスピリットを求める学生なんていないだろうしどうでもいいな。更にどうでもいいことに、俺は今日初めて学長の氏名を知った。

ともかく、遊びの予定以外で運河を訪れることはもう無いのだ。

 

そう思うと少し感慨深くもなるもので、1号館を離れた俺の足は、キャンパスの奥の方へと向かっていた。

あれだけ嫌だった数学(特に解析系)から解放され、こんなに清々しい気持ちで学内を探訪するのは一体何年ぶりだろうかと思う。講義やゼミが終わるや否やなるべく早く、なるべく遠くへ逃げるように帰る学生生活を続け、目を逸らしがちだった大学の本質が見えてくる。

 

どうせだから、とまずは4号館の掲示板を見納めることにする。

見納める、と言っても、前述のような学生生活をしていた俺がマトモに掲示物を見たことなんてほとんどあるはずもなく、のっけからなかなか刺激が強い。世の中には様々な掲示があるものだ。

そんな中に、俺と同時期に入学し、3年目以降疎遠になった人間の名前を発見する。今思えば、かつて学科で一緒に居た連中は皆一様にそもそも「陽」の性質を持ち合わせていたし、それでいて学業もある程度以上に秀でていたので俺と相容れるはずもなかった。まあそれを悲観していた訳でもないが、楽観できなかったのも事実だと思う。そういう部分で俺の「陰」性はますます強まっていった。

 

ただ、一度だけ奴の家に訪れたことがある。大学のグループ課題半分、遊び半分みたいな感じだったと思う。

そのとき、本棚を見たら松本大洋の『ピンポン』が揃えてあったのだ。

『ピンポン』を目にして俺が反応しない訳が無い。普段あまり口を開かないのに、急に饒舌になって好きな話数とかを聞き始める俺。「陰」そのものである。

その場に居た全員が苦笑しながらも、奴だけは「いや、『ピンポン』好きな人間に悪いのはいねえからよ」と言うのだった。

 

気が付いたらそんなエピソードを思い出していた。そう言えば、確定した時期は違うがこいつも1回留年していたんだった。同じタイミングでの卒業となる。つーかなんでこいつこの時期に呼び出されてんだよ......

もし卒業式の後の卒業証書貰う会で見掛けたら面白いな、互いに驚くことだろう......とか思いながら4号館を後にした。

 

こんな時期でも、大学に人はいる。「陽」たちが中庭でフリスビーをしたりしている。フリスビーを用いたあのスポーツ...なんだっけ、名前も忘れてしまったよ。それのサークルが存在したことも思い出す。

目を逸らし続けていたが、こいつらにもそれぞれに人生がある。きっとどいつもこいつも、口では留年の恐怖に怯える風を出しておきながら、単位くらい要領よく集めていて、けっこう幸せで健康的な人生を過ごしているのだ。童貞でもないだろう。「バラ色のキャンパスライフ」というやつかも知れない。

橋本絵莉子波多野裕文の『飛翔』の歌詞を思い出す。「もう一度やり直せても  同じことを選ぼうと思う」と橋本絵莉子(チャットモンチー)は言う。俺もそうだと思う。ていうか俺はどうやってもこいつらみたいなキャンパスライフは送れないだろうし、送らないだろうなと思う。

不眠症をカミングアウトすると、よく「考えることを辞めれば楽になれますよ」って言われる。ほんとによく言われるけど、俺にとってはそれは死んでるのと同じだ。考えるのを辞めて社会にとろとろ溶け込んでいくくらいだったら自律神経こじらせて死んだ方がマシである。

 

とは言えこういうことを考えてると動けなくなってきて、出先でそれはまずいので、28日に発売されるチャットモンチーのトリビュートアルバムがすげえ楽しみ、って方向に思考を無理矢理シフトしていく。

いやほんと、すげえ楽しみ。爆音で、チャットモンチーを聞いた、涙が、もう涙がぼろぼろ、溢れた、経験があるのか?おまえらは

 

 

夕食として麒麟児の油そばを食って帰ることにした。

噂通り、80円値上がりしていた。流石に麒麟児にはそれなりに足繁く通っていたので、割合最近の話だろう。思えば、「食」の面ではかなり良いタイミングで理科大に通っていたのだ。麒麟児がちょうど開店したあたりで入学し、ちょうど油そばが高くなる頃に卒業する。

味でも量でもお金においても、大変お世話になった店だった。本当に有難う、と思い、泣きながら麺をすすった。嘘だけど。

 

 

最後に、麒麟児から少し川の方に行ったところにある長屋?みたいな建物を見て帰った。冒頭に貼った写真は、そのとき撮ったものである。

俺は本当にこの建物の、この向きが好きだった。逆から見ると店であることが分かるのだが、要するにこの向きは「裏」側である。

「裏」特有の雑然とした雰囲気とか、古過ぎず、新し過ぎない日本らしい建築様式であったりとか、アンテナの角度とか、室外機の配置とか、辺りに高い建物がほとんど無いので屋根を挟んで空が綺麗に見えるあたりとか、全て好きだった。

まあ要するに、「現代」「日本」「ケ」っていう俺の好きな三大要素を全て満たしていた。

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(同じ場所、2~3年前に撮った写真)

犬派だが、猫を写真によく収めているかも知れない。今気付いた。

というか、絵とか写真におけるモチーフとしては犬より猫の方が好きだ。っていうかたぶん普遍的に優れている。なんでだろう。

ちょっとしばらくはこれについて考えてみることにします。

 

 

あと、帰りにツタヤで『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 15 桜の頃』を借りた。

ササキトモコの新曲が本当に良い。最近、微妙にフレンチポップの時代が来ていませんか?