絵、音楽

映画『ペンギン・ハイウェイ』は傑作

僕という人間は、まあ、デビュー作の『太陽の塔』から最新作の『夜行』まで、もっと言うと映画版『夜は短し』の特典だった書き下ろしの短編小説2本と、ヴィレヴァンとのコラボでひっそりと執筆された幻の作品『郵便少年』まで、森見登美彦が著し、本としてこの世に出回ったものは全て読破しているし、所有しているんですよ。もちろん『ペンギン・ハイウェイ』もその例に漏れない。後にコミティアに通うようになってjunkumaというイラストレーターのファンになり、それがハードカバーで出版された際の表紙絵と繋がることになるのですが今はそれは置いといて。『ペンギン・ハイウェイ』(とそのスピンオフ作品である『郵便少年』)は、森見作品の中で唯一京都が登場しないことで知られます。郊外の架空のニュータウンを舞台に、聡明で平生子供らしくない男の子が、未知との遭遇に心をときめかせる一方、本来持っている子供らしさとの狭間で揺れ動く、そういうお話。森見作品の大きな特徴として「専ら主人公の一人称目線で物語が進行していく」というものがあり、実はこれは映像化にあたって割と大きな壁になります。湯浅政明という人物は森見のそういった志向と相性がよく、『四畳半神話大系』と『夜は短し』を完璧な形で映像に仕上げました。ただ、まあ『四畳半』を見たことがある人なら分かりますがひたすらにモノローグが長い。浅沼晋太郎の滑舌が無ければ実現しなかったかも知れない。明らかに他のアニメとは作りが違う。森見としては『四畳半』の出来に大満足だった一方、『有頂天家族』のアニメ化が決まった際に非常に心配になったそう。しかし『有頂天家族』のアニメ化は成功した。久米田康治によるキャラクター原案と、櫻井孝宏能登麻美子をはじめとする声優陣の活躍、名のあるアニメーターの活躍、そしてPAWORKS の背景美術の技術、全てが噛み合って、キャラクターたちがとても活き活きと動いた。

 

 

さて、では同じように映像化の観点に立った際、『ペンギン・ハイウェイ』にはどんな強みがあっただろうか?

 

一つ目は、メインキャラクターの可愛さだ。特に主人公の「アオヤマ君」、「お姉さん」、そして「ハマモトさん」 舞台こそ(京都ではないという点で)森見らしさは薄いものの、これらのキャラクターは皆森見作品らしい個性的なキャラクターを持っていた。

 

二つ目は、ニュータウンを舞台としたことによる「視覚的な透明度の高さ」。
『四畳半』では京都の雑多な部分、『有頂天』では京都の流麗な部分が肝要であったため、背景美術の出来=透明度の高さには繋がらなかった。
フラットデザインや現代建築に見られるように、透明度は評価に繋がる可能性が高い。

 

三つ目は、そもそも映像映えする設定が随所に盛り込まれていること。
「ペンギン」の変形、「海」の変形、終盤に向かうにつれてどんどん多くなっていく似非SF描写。
ペンギン・ハイウェイ』を読む人は、恐らく必ず、各々が思い思いの情景で頭の中にアニメーションを想像していたと思う。

 

スタジオコロリドは、これらを全て描き切った。
ジブリ出身のベテランアニメーター、撮影、音響の力、川野達郎や紺野大樹といった若い圧倒的な才能の取り込み、そして何より新井陽次郎のデザインの魅力。
映画『ペンギン・ハイウェイ』は、間違いなく2018年を代表する傑作アニメ映画である。

 

それにしても、アオヤマ君の妹のCVは久野美咲だってすぐ分かったけどペンギンも久野美咲なのはマジで驚いたなぁ。ひそまそでも思ったけどどんだけ高音域出せんだよマジで